はやぶさ帰還の傍らに、
私たちと共に、はやぶさが地球帰還を果たしてカプセルを私たちに届けるという任務を見守ってくれている女神がいます。
惑星探査ロボット「ミネルバ」、彼女です。
「ミネルバ(ローマ神話の女神に由来)」は、6月13日に地球帰還を果たす探査機「はやぶさ」と共に小惑星「イトカワ」へ旅だった、小さな小さな惑星探査ロボットです。
予算がなく、民生部品によって寄せ集めて作られたチーム手作りのものであり、低予算ゆえイトカワでは、なるべく多くの画像を、ただただひたすら、はやぶさ経由で私たちに届ける使命を与えられました。
はやぶさは、このミネルバをイトカワ地表に送り届け、ミネルバはイトカワ地表で跳ね回りながら、その使命を果たす予定でした。
はやぶさにとって、また、ミッションチームにとってミネルバは、本当の意味で女神であり、彼女無くしてはやぶさもミッションを遂行することは出来なかったといわれています。このミネルバを紹介するにあたり、秀逸な記事がありましたので JAXA 提供の実際の写真と共にご紹介します。
(ニコニコ大百科「小惑星探査ロボット、ミネルバ」より)
イトカワ沖、運命の16分イトカワへ旅する道中、ミネルバは時折地球からの呼び掛けに応じ、はやぶさに抱かれた状態でコンピュータが起動する-50℃以上になるのに2時間かけてその体を温めたり、カメラテストを行いながら、静かに眠ってイトカワに降り立つその時を待ち続ける。
2006年9月 はやぶさ、イトカワに到達。
11月12日 8時45分 ミネルバ、降下に向けて起動開始。
この日までにはやぶさの姿勢制御の要であるリアクションホイールが3基中2基が故障。十分な姿勢制御が保証できない状況に陥っており、(本来ならリアクションホイールが2基残っていれば十分だったのだがそれも叶わず、なんとか化学エンジンを吹かすことで能力不足を補っていたが、これは帰還時に使う分の燃料を逼迫する方法で、あまり無理や長期にわたって利用出来る方法ではなかった)備えが完全と言える状態ではなかった。
15時7分38秒 地球から、イトカワの上空55mにホバリングしたはやぶさに対し、ミネルバ放出を指令。
この命令が遥か彼方のはやぶさに届くまでの時間、約16分―――
約40分後 ミネルバを無事分離、ミネルバから現在の状況が正常に送信されることを確認する。
しかし3時間後、本来ならイトカワが夜になり、電力の関係で送信が途絶えるはずのミネルバからなおデータが送信されていることによって、ミネルバが想定されていた状況に無い事がわかる。
(ちなみにこの時ミネルバは自身がホッピング中と認識して、そういう状態にあるとデータを送信していた)
あらためてはやぶさのデータを確認した結果、ミネルバ放出指令がはやぶさに届く16分の間にはやぶさは上昇を開始。結果イトカワから200m上空、毎秒15cmで遠ざかる状態からミネルバが放出されたことが分かった。
イトカワの引力脱出速度は秒速15~20cm。これによりミネルバがイトカワに届く可能性は、ほぼ無くなってしまった。
11月13日9時32分20秒 通信可能圏内からの離脱により、ミネルバは約18時間の短い探査の役目を終え、はやぶさとの交信を絶った。
開発担当者はこの後もミネルバからの通信が回復する可能性を信じ、2週間中継器のスイッチを入れて待ち受けていたという。
はやぶさがイトカワ沖を去って幾年月、ミネルバは今もなおイトカワと寄り添うように静かに眠っているはずである。
あの時の奮闘の日々の記憶と共に―――
ミネルバが遺したものイトカワ地表には降り立つ事が出来なかったミネルバだが、多くのものを交信が途絶える18時間の間に遺してくれた。
リアクションホイールが壊れたことによって十分な姿勢制御をとることが出来なかったはやぶさは、この教訓によってさらに精度の高い接近プロセスを学ぶことが出来、結果イトカワへのターゲットマーカー投下・接地を成功させることが出来た。
また多くの部品を精度の高い宇宙仕様のものではなく民生部品で製作したミネルバが-60度以下の宇宙空間や史上最大規模の太陽フレアにさらされつつも約2年の休眠期間を無事に過ごし、18時間も元気に活動した事、遥か彼方で地球-母機-子機間のデーター中継が無事に行われていることが確認できたことは、これからの衛星開発に大きな実績と自信を残したと言えよう。
ミネルバははやぶさから射出後、 はやぶさとの交信範囲から離れるまで、自分の体調や温度など周りの状況をけなげにはやぶさに送り続けた。
それと同時にミネルバは周りの写真も撮り続けた。ミネルバ自身の記憶・通信能力の制約から撮った写真のうちゴミ(何も写っていない)と判断した写真は消去し、ちゃんと被写体が存在する写真のみはやぶさに、そして地球で見守る「
父親」へ送るように教育されていた。
その結果、通信可能だった間に送られてきた写真はたったの一枚、しかも120×160pixlのさらに下部分を消去した写真であった。
そこに映っていたものは、はやぶさの太陽電池パネルの一部、そう「
遥かなる距離を共に旅した親友の姿」だった。